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『より多くの人がより良い野菜に出会うために、より多くの農家さんがより良い土作りを実現するために』
これからの時代に「あるべき農業」とは何か。この課題へのアプローチはこれまで科学的に定義されてこなかった。なぜなら、土地によって気候風土があまりにも異なり、各地の職人しかベストな農業を成せないからである。
そんな中、我々は土壌菌叢に着目した。菌叢データを用いると土壌の持つ機能を最大限に活かせることから、作物収量を維持しながらも持続可能な「あるべき農業」に必要な土壌を菌叢データで定義することを目指している。現在、土壌菌叢の活性度合いを動的に把握する為に、全国の農家を訪れて経験と勘に裏打ちされた土づくりの手法や信念を伺っている。これとメタゲノムやメタトランスクリプトーム、メタボロームデータ※を組み合わせて、最高の技術で作られた土壌を菌叢解析により定義する事で、「あるべき農業」を生産者、消費者、販売者が一体となって追求する取組を行う。
※解析結果は特許申請と論文発表の準備段階
一般的な農業には農薬と化学肥料が使われます。農薬と化学肥料に過度に依存した農業は、農地を疲弊させることから持続可能な農業ではありません。ただし我々は、農薬と化学肥料を用いることが悪いこととは考えておりません。農薬と化学肥料を一切用いない農業が正しい農業とも考えていません。適切な用法・用量の農薬と化学肥料の利用は、持続的に農業を営むために理にかなっていると我々は考えています。しかし、適切な農業のあり方はその土地の気候風土によって異なるため、一般化された「あるべき農業」は未だ定義されていません。農家さんの経験と勘に依存している部分も多いため、高度な技術を持った農家さんは匠とも言われます。そんな匠の技を持つ農家さんが何を見ているのかと言うと、土の中の微生物です。一部の農家さんは、育てるのは農作物ではなく、土の中の微生物だというほど、農業にとって土壌の微生物は重要です。「あるべき農業」を定義するために、農業にとって重要な土壌微生物の活性度合いを動的に把握することが重要と考えています。
土壌中の微生物は、1種類ではありません。非常に多種多様な微生物が生息しています。そのような微生物群のことを菌叢と呼びます。キンのクサムラと書いて菌叢です。菌叢の遺伝子情報の総体のことをマイクロバイオームと呼びます。近年遺伝子情報の解析技術の発展により、土壌菌叢の遺伝子情報を安価に丸ごと取得できるようになりました。いわゆる次世代シーケンサーを用いたメタゲノミクスです。質量分析装置も発達しています。質量分析装置の発達により、土壌そのものや土壌で育った農作物の代謝物の情報を網羅的に取得することができるようになりました。いわゆるメタボロームです。脂溶性代謝物を網羅的に測定することに特化したリピドミクス 、硫黄代謝物を網羅的に測定するスルフィドミクス、微量元素を網羅的に測定するメタロミクスなどのデータ取得プラットフォームも整備されつつあります。我々は、そのようなデータ取得方法の高度化にも関与しつつ、最先端のデータ取得技術を活用して菌叢データを取得しています。 ところで、1回の測定で得られるデータは、メタゲノムもメタボロームも非常に大容量です。エクセルによる解析では処理ができないほど情報量の多いデータです。そのような大容量のデータから意味を引き出すために、様々な多変量解析技術を活用しています。階層的/非階層的クラスタリングなどの教師なし機械学習, サポートベクトルマシンなどの教師あり学習etc。また、マイクロバイオームならではの意味づけをするために、窒素や硫黄元素の酸化還元に関わる可能性のある微生物を集めたデータベースや、基質と生成物が明らかとなっている微生物を集めたデータベースを活用しており、また日々更新しています。
我々は最高の土作りをしている日本の農家のすべてを訪問するという目標を立てて,文字通り北海道から沖縄まで,現時点まで延べ 63 軒の農家を訪れ,匠の農家たちの土作りの手法や信念を伺い、またデータを収集してきました。それらを教師データとし、最高の技術で作られた土壌を菌叢で定義し、あるべき農業を生産者,消費者,販売者とが一体となって追求する取り組みを進めています。
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