プレスリリース

宇宙の食にも「藻」が貢献! 藻類スピルリナでコンパクトなタンパク質生産システムをつくる -JAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案に採択-

2018.09.26
  • ちとせ研究所

日本と東南アジア全11社で活動するバイオベンチャー企業群 “ちとせグループ” の中核企業である株式会社ちとせ研究所は、国⽴研究開発法⼈ 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙探査イノベーションハブが実施した研究提案募集「穀物に頼らないコンパクトなタンパク質生産システム」に応募し、採択されました。

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<ポイント>
● スピルリナはタンパク質を豊富に含む藻類で、生産性・栽培時の省資源性共に優れている
● ちとせグループは、微生物や藻類などの微細な生き物を大量に培養する技術を保有している
● 省資源・高生産性・省スペース化も可能な新しい大量培養方法を用いてスピルリナを活用したタンパク質生産システムを開発し、地球上のタンパク質供給の増大及び宇宙での食の供給に貢献

 

人類の生存圏・活動領域の拡大に向けて、宇宙ステーションや月・火星で生活するための宇宙開発が世界各国で進んでいます。人類が生活を営む上で食料供給は欠かせませんが、食料を全て地球から運ぶことは極めて非現実的な為、旅の途中、さらには現地でも食料を生産することは必須となると考えられます。

JAXAでは、将来的な月面長期滞在に向けた月面での食糧生産システム(=月面農場)の研究が進められています。月面農場は地球上とは異なる生産技術が必要であり、それに加えて宇宙飛行士の作業や使用するリソース(水、酸素、二酸化炭素、電力)を最小限とすることなど特異な条件での栽培となります。そのため、月面農場での畜産や魚の養殖は現在のところ費用の面で現実的でなく(地球からロケットで補給した方が安い)、地球からの補給が絶たれるとタンパク質やビタミンなどが不足することが見込まれています。このような背景から、将来の月面長期滞在を支えることのできる、地上の最先端技術を活用したコンパクトなタンパク質生産システムの提案が募集されました。

そこでちとせ研究所は、タンパク質生産効率の高いスピルリナを用いた省資源で高生産性・省スペース化も可能なタンパク質生産システムの研究開発を提案し、採択されました。

藻はタンパク質やビタミンなど豊富な栄養価を含み、高い生産性からコンパクトかつ省資源での栽培が可能です。藻の中でもスピルリナは古くからの食経験を持ち、タンパク質生産効率の高さ、栽培時の省資源性共に特に優れています。 また、ちとせ研究所が提案するシステムは、既存の農地と競合せずに利用することが可能であり、且つ生産規模の拡大・縮小も自由自在なため様々なビジネスモデルへの応用が期待できます。本開発を通じて、月面長期滞在時のタンパク質生産システムとしての活用はもちろん、地球上のタンパク質供給量の増大へも寄与することを目指してまいります。

 

■採択された提案
【研究名称】:食用藻類スピルリナを用いた省資源かつコンパクトなタンパク質生産システムの開発
【研究要旨】:人口増加と経済成長により、2050年世界タンパク質需要は対 2005年比で2倍以上になると予測される。このタンパク質需要は穀物の増産だけでは賄いきれないため、穀物に頼らない新しいタンパク質生産が求められている。本提案では、食用藻類スピルリナを用いた省資源かつコンパクトな新たなタンパク質生産システムの開発を目指す。スピルリナは古くから食経験を持つ藻類で、その単位面積当たりのタンパク質生産性は大豆の15倍以上、土地と淡水の使用量もそれぞれ約1/27、約1/5と資源性にも優れる。このスピルリナを高効率で生産するシステムは、地球上のタンパク質供給量の増大に寄与するだけでなく、月面長期滞在時のタンパク質生産システムとしても期待される。
【共同機関名】:株式会社タベルモ/株式会社IHIエアロスペース

 

<参考資料>
◯宇宙探査イノベーションハブとは
2015.4.1にJAXAが設置した、宇宙探査における研究課題の設定の段階から大学や民間企業等も巻き込んだオープンイノベーション型の探査研究を進めている組織。宇宙だけでなく、地上でも役立つ技術開発を行うことで新たな産業の創出につなげることを目指して活動している。

◯スピルリナとは

35億年前に誕生した藻の一種。60種類以上の豊富な栄養素を持ち、マヤ文明時代から人々の貴重な栄養源の1つとして食されており食経験が長い。粉末や錠剤にして健康食品として食されることが多く、海外を中心に「スーパーフードの王様」として広く知られている。
生産に土壌を必要とせず、且つ水資源を有効活用できることから藻類が注目されているが、藻類の中でもスピルリナは特にタンパク質含有量が高いため新しいタンパク質源としての期待が高い。スピルリナの単位面積あたりのタンパク質生産性は、大豆やトウモロコシと比較して15倍以上。また、スピルリナから1kgのタンパク質を生産するために必要となる土地の面積と淡水の使用量を大豆と比較した場合、土地面積は約1/27、淡水使用量は約1/5となり、資源性の面からも優れていることが分かる。

※ちとせグループは、藻類スピルリナを活用した持続的なタンパク質供給を目指して2014年に「株式会社タベルモ」を設立。2018年5月には、三菱商事株式会社と株式会社産業革新機構から総額17億円の資金調達を実施した。
▶関連リリースはこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000034251.html

◯ちとせグループの大量培養技術と主なプロジェクト
各種産業で利用されている微生物や藻類を大量に培養する技術を保有している。藻類については、鹿児島県に国内最大級の藻類生産実証試験設備を構築し、世界で初めて燃料用藻類(ボツリオコッカス)のパイロットスケールにおける長期連続生産を成功させた(NEDO, IHIらと)。また、静岡県掛川市において食用藻類(スピルリナ)の屋外大規模培養を行い、世界初の生スピルリナ製品の事業化に成功した。

▶詳しくは以下の記事を御覧ください
『ちとせの藻ヂカラ[中編] -ちとせの藻類プロジェクト-』
https://journal.chitose-bio.com/algae_expertise-2/
『ちとせの藻ヂカラ[後編] -ちとせの武器、3つの藻ヂカラ-』
https://journal.chitose-bio.com/algae_expertise-3/

 

<ちとせグループ概要>
https://chitose-bio.com/jp/
千年先まで人類が豊かに暮らせる環境を残すべく、日本と東南アジア全11社で活動するバイオベンチャー企業群。「生き物を理解し、マネージするバイオ技術」と「蓄積されたバイオ技術を事業化する技術」を武器に、農業・医療・食品・化学・エネルギーなどの領域に新たな価値を生み出す。

◯グループ全体を統括する「Chitose Bio Evolution Pte. Ltd.」の概要
・設立 :2011年10月
・本社 :シンガポール
・代表者 :代表取締役社長 藤田朋宏
・事業内容:バイオ関連事業の研究開発・事業開発戦略の策定、人材育成・財務指導を中心とした経営支援

◯研究開発・事業開発を行う「株式会社ちとせ研究所」の概要
https://chitose-bio.com/cl/
ちとせグループの中核企業として、研究開発・事業開発を行う
・設立 :2002年11月
・本社 :神奈川県川崎市
・代表者 :藤田朋宏/釘宮理恵
・事業内容:幅広い生物(微生物・培養細胞・微細藻類など)の育種・培養技術を有し、これらの技術を産業利用されている生物で活用する。さらに、バイオ領域における新規プロジェクト立案、シーズ技術構築、実用化研究開発、事業化支援・コンサルティングを行う。

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