近年の菌株開発では、遺伝子組換え技術を軸とした合成生物学的アプローチが主流です。しかし弊社ではそれに加えて、配列や菌株の遺伝子を多様化し、より良い形質を示す株をスクリーニング(選抜)して株を育てていくアプローチをとります。
宿主に導入する代謝経路遺伝子群の選出を行います。宿主の特性と導入する遺伝子群との相性は未知な部分が多いため、当社では様々な由来を持つ複数の遺伝子を選出し、多様性をもたせます。
遺伝子プロモーターや翻訳調節因子を新規技術で多様化することで、より宿主の発現機構に合うものを選抜することができます。この手法は、遺伝子の導入と同時に行うことが可能です。プロモーター、翻訳調整因子、遺伝子をそれぞれ多様化させることで一度に相当数の組み合わせのDNAを作製し、試すことができます。
当社は酵素活性を改良する手法としてTRACE法(Tracked Replacement Analysis for Catalytic Enhancement)を開発しました。様々なバリエーションの配列や立体構造を解析してより良い酵素配列を予測する手法は従来から用いられてきましたが、既存のデータベースを使用すると、活性情報に関与しない配列(ノイズ)が多く含まれ、活性と配列の相関を正確にとらえることが難しくなります。当社のTRACE法は、既存のデータベースの酵素配列情報に依存せずに、遺伝子の変異とAI分析を組み合わせた独自の技術で酵素の最適化をデータ駆動的に実現します。
育種には多くの突然変異を導入し、バリエーションの豊かな菌株を得ることが重要です。DNA複製の際に、ラギング鎖が岡崎フラグメントの合成という複雑な仕組みになっており、片側に複製エラーが蓄積することを利用したのが当社の不均衡変異導入法です。この仕組みを人為的に引き起こすことで、自然に生じる生物進化をさらに加速させる新たな変異体作成法として、産業用生物の育種に活用しています。
2本鎖DNAのうちリーディング鎖は複製エラーが少なく、ラギング鎖は複製エラーが多く出現する傾向があります。複製精度の低いDNAポリメラーゼを発現し、ラギング鎖で作用させることで、ラギング鎖のみさらに複製精度を低下することが可能です。
DNA複製時に、片側にのみ変異が蓄積するということは、鋳型となった配列はそのまま保存されます。これにより、環境に適した形質を持つ配列を維持した上で、さらに別の変異を導入することが可能です。このような不均衡な変異の入り方は、均等に変異が生じる場合と比較して、多様性が高まることがシミュレーションにより明らかになっています。
多様性を持たせた菌株の作製後、目的に応じて適切に菌株を評価します。このスクリーニング工程において当社は独自のノウハウを有しており、菌株の能力を多角的に判断して、次の多様化-選抜サイクルにつながる菌株を選抜しています。